TCFD提言に基づく開示

「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures、以下「TCFD」といいます)は、G20金融安定理事会(FSB)によって、2015年に設立されました。
2015年のパリ協定で定められた「地球の平均気温を産業革命前の+2℃に抑える」ことを目指している中で、投資家が適切な投資判断が出来るよう、企業に気候関連財務情報開示を促すことを目的としています。
当社は、2017年6月に公表されたTCFDの最終報告書「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」に従い、推奨されている開示項目について、適切な情報開示に努めてまいります。

ガバナンス

気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制と気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営の役割について

当社は、気候変動を含む環境課題への対応については、取締役会にて定期的に報告を行い、その内容について議論を実施しています。取締役会は、当社の気候変動関連のリスクと機会等の評価、対応、開示等について最終的な責任を負っております。
気候変動を含む環境課題への全社的な対応にあたっては、取締役である経営政策本部長を責任者、経営管理部を所管部署とし、TCFDを含む気候変動に関する取り組みを管理・推進すると共に、全社の重要方針や施策等についての取り纏めを行い、取締役会へ報告・提案し、取締役会で議論を実施します。
気候変動を含む環境課題に関連した事業別の戦略等につきましては、各営業本部の本部長が経営政策本部長および経営管理部と連携すると共に、取締役会にその概要を報告し、取締役会でその戦略等について評価、議論を実施します。

なお、2023年4月28日に開示した中期経営計画「Chori Innovation Plan 2025」にて、TCFDを含むサステナビリティ全般の戦略・取り組みについて記載しておりますので、ご参照下さい。

戦略

組織が識別した、短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会および気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響について

当社は、気候変動における移行リスクおよび物理リスクを検討するために、シナリオ分析を実施しております。2021年度は2℃シナリオ及び4℃シナリオにて分析を行いましたが、2022年度は1.5℃シナリオ及び4℃シナリオにて再分析・検討を行いました。1.5℃シナリオでは、2℃シナリオ同様に物理的リスクの上昇は緩やかであり、環境負荷低減製品の開発・拡販の機会が増加することが想定されます。また、4℃シナリオでは、気候変動対策が十分に進展しないため、異常気象などの物理的リスクが高まることが想定されます。

上記の想定・背景から、 2030年までを分析対象期間としシナリオ分析を実施した結果、特定された気候変動に関連するリスク・機会が当社の事業へ与える影響、およびその対応策を以下のとおり整理しています。

気候変動に関連する主要なリスク・機会が当社事業に与える影響及び主な対応策

タイプ リスク・機会項目 当社事業へのインパクト
リスク/機会
当社の主な対応策 財務影響
1.5℃ 4℃
移行リスク 政策と法規制 脱炭素政策の強化 炭素税の導入・拡大
  • 仕入価格の増加/各種コストの増加
GHG排出量算定による、当社の実績値及び影響の認知継続
脱炭素商材の取扱い強化
*小
最大仕入国の中国の規制強化
  • 生産減少による一時的な取引量の減少
グローバルサプライチェーンの強化・拡充
技術 サーキュラーエコノミー拡大加速 廃棄物削減の取組拡大
  • リサイクル関連商材の需要の増加
  • 廃棄物削減に貢献する商材の需要の増加
リサイクル商材の取引拡大
  • リサイクルチップ
  • リサイクルポリエステル糸(ECO BLUE®
再生可能資源の使用の拡大
  • バイオ関連商材の需要の増加
生分解性樹脂商材の取引拡大
市場 脱炭素移行にともなう市場変化 自動車のライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化に向けた政策・取組の拡大
  • 自動車のEV化に伴うリチウムイオン電池関連商材の需要の増加
リチウムイオン電池関連素材の取引拡大
繊維業界のサプライチェーンを通じた脱炭素に向けた政策・取組の拡大
  • サプライチェーンを通じてサステナブルな取組をリードすることで脱炭素化対応にかかるコストを低減
蝶理独自のサプライチェーンを通じたサステナビリティイニシアチブの推進
BLUE CHAIN®
ステークホルダーのサステナビリティに対する関心の高まり 非石化製品等サステナブル製品の需要増加
  • 環境配慮型商材需要の増加
【環境配慮型商材の取扱い強化】
石化製品の買い控え
  • 環境配慮型商材への切り替えに伴う一時的な取引量の減少
気候変動対応に関する情報開示要請の拡充
  • 対応不十分による企業価値低下・投資減少
  • 気候変動対応による顧客拡大・投資増加
物理リスク 急性・慢性 自然災害/異常気象の頻発化と深刻化 水不足
  • 生産減少による一時的な取引量の減少
グローバルサプライチェーンの強化
大規模な自然災害
  • サプライチェーン寸断による一時的な取引量の減少・リードタイムの長期化
海面上昇
平均気温の上昇
  • 秋冬物の取引減少
  • 農薬関連商材の需要増加
  • 消毒(うがい)関連商材の需要増加
【商材例】
  • 次世代商材の取扱い強化
  • 農薬原体(殺菌剤、水稲除草剤、殺ダニ剤、除草剤)
  • 医薬品(ヨード)
  • 売上高またはセグメント利益にもたらす影響の大きさにより分類し、より影響が大きいと判断をした方を濃い色にしています。
  • 参照した主なシナリオ:IEA(国際エネルギー機関)の「World Energy Outlook(WEO)2022」、 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)社会経済シナリオ「共通社会経済経路(SSP、Shared Socioeconomic Pathways)」、など
*炭素税の導入・拡大における財務影響(事業インパクトの定量評価)
1.5℃シナリオ
2030年 103千USD(約14百万円)
2050年 185千USD(約25百万円)

*2022年度のGHG排出量(Scope1およびScope2(Scope2についてはCO2排出係数を乗じて算出))に1.5℃シナリオにおける炭素税の予測を乗じて計算
4℃シナリオにおいては日本で炭素取引は現状から変化なしと想定しているため試算なし

いずれのシナリオにおいても、当社の事業への影響は極めて限定的である一方、環境負荷低減製品の開発・拡販の機会が増加することがわかりました。継続して事業インパクト評価を実施し、適切なリスク管理と、環境に配慮した製品の需要増加などのビジネス機会を収益向上につなげてまいります。

リスク管理

気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセス及びそのプロセスが組織の総合的リスク管理にどのように統合されているかについて

リスクマネジメント規程の運用
当社は、当社の経営活動に潜在するリスクを特定し、平常時より、リスクの低減、危機の未然防止に努めると共に、当社の経営活動に重大な影響を及ぼす恐れのある危機発生時の体制を定め、迅速かつ的確な対応をとり、事態の拡大防止及び速やかな収拾・正常化を図ることを目的として、リスクマネジメント規程を定め、運用しております。
平常時のリスクマネジメント
リスクマネジメント総責任者を社長、リスクマネジメント推進責任者を経営政策副本部長(人事総務部担当)とし、リスクマネジメント推進責任者とリスクマネジメント担当組織(人事総務部)は、社内に潜在するリスクについて、重点課題を特定し、リスクを低減、未然防止、早期発見するための諸施策を立案し、必要な教育・訓練を自主的かつ計画的に実施すると共に、危機対応後の結果のフォロー、効果の検証と課題の抽出・改善を行います。

当社の定めたリスクマネジメント規程では、気候変動に関するリスクにつきましては、「社会、経済・政治等、外部経営環境」および「BCP」に関わるリスクの一つと定義しており、所管部署である経営管理部がリスクマネジメント推進責任者およびリスクマネジメント担当組織と連携の上対応にあたります。前述のシナリオ分析での検証結果の通り、当社の事業継続においてサプライチェーンの確保は非常に重要なテーマであります。リスクマネジメント規程で分類している取引に関わるリスクへの対応として、取引先に起因する諸問題によるサプライチェーンの途絶のリスクへの対処と共に国内外における調達活動において社会的責任を果たすため、CSR調達ガイドラインを定め、企業倫理・法令遵守、安全・防災・環境保全、製品安全・品質保証、人権・労働環境などを重視した調達活動を推進しております。
危機発生時の対応
危機発生時の対応は人命および安全を最優先とし、リスクマネジメント規程に則り、危機発生時の連絡体制に基づく連絡・報告、リスクマネジメント総責任者による危機対策本部設置の判断、危機対策本部の任務遂行、緊急広報、調達報告並びに再発防止対策等を行います。

指標と目標

組織が自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスクと機会を評価する際に用いる指標、組織が気候関連リスクと機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について

当社グループでは、2020年度より温室効果ガス(以下、GHGといいます)の排出量実績値を集計しており、GHG排出量(Scope1とScope2)を削減し、2050年のカーボンニュートラルを目指しております。さらに、サプライチェーン全体のGHG排出量削減に向け、Scope3の削減も検討していきます。

GHG排出量削減目標については、今後設置予定のサステナビリティ推進のための専門委員会の準備機関として、2023年7月にサステナビリティ推進準備委員会を設置し、重点テーマの検討を進めております。

GHG排出量の実績

  カテゴリ 項目 2020年度
実績値(t-CO2
2021年度
実績値(t-CO2
2022年度
実績値(t-CO2
算定の範囲
Scope1 直接排出量 385 330 312 連結
Scope2 間接排出量 956 866 872
  Scope1+Scope2合計 1,341 1,196 1,184  
Scope3 カテゴリ1 購入した製品・サービス 1,090,766 1,209,416 単体
カテゴリ2 資本財 131 372
カテゴリ3 Scope1、2を除くエネルギー関連活動 41 36
カテゴリ4 輸送・配送(上流) 113,462 126,087
カテゴリ5 事業から出る廃棄物 102 108
カテゴリ6 従業員の出張 126 128 168 連結
カテゴリ7 従業員の通勤 238 243 317
カテゴリ9 輸送・配送(下流) 461 454 単体
カテゴリ12 販売した製品の廃棄 1,318 1,292
Scope3合計 364 1,206,654 1,338,251  
Scope1:直接排出量
Scope2:間接排出量
Scope3:サプライチェーン排出量(2020年度については従業員の出張・通勤(カテゴリ6・7)に伴う排出のみ)

*GHG排出量の測定についてはGHGプロトコルで定義されているGHG排出量算定方法に基づいています。